彼のおじいちゃんが亡くなったと連絡が来た次の日。
彼は色々と大変なのに
1時間半かかる私の地元まで会いに来てくれた。
目は腫れて赤かった。
まだ目も潤んでいた。
そのまま私たちは近くのスターバックスに寄ることに。
その時の会話で彼の口から出た言葉は意外にも前向きなものだった。
「俺らが生きてる今この瞬間っていうのは、じいちゃんが生きたくて生きたくて仕方なかった今日やねん。
だから俺はこれからも今日という一日を大切に生きる！」
移りゆく季節
今日がどんな日であれ時間は待ってはくれない。
季節はどんどん移り変わっていく。
気づけばスターバックスのドリンクもホリデーのものに変わっていた。
スターバックスのホリデーメニューが好きな私たちは
彼はジョイフルメドレーティーラテを
私はジンジャーブレッドラテを頼んだ。
クリスマスソングがかかった店内で
「もうこんな季節か」
とドリンクを飲みながら二人で話した。
私たちの気持ちとは真逆のワクワクするような明るい曲の中で。
時間は待ってはくれない
彼のおじいちゃんが亡くなったのは昨日のことなのに
彼は明るく振る舞っていた。
私に気を遣わせないようにという気持ちもあったと思うが
彼はもう少しずつ現実を受け入れ
前を向いていた。
時間は待ってはくれないから
私たちは今日という1日をより大切に過ごすことが必要だと思う。
けれどそれはなかなか難しい。
勉強や仕事に追われて
周りの景色を楽しんだり
寝る前に今日を振り返る時間なんて設けられなかったりする。
だけどそれを言い訳にしてはいけない。
私と彼はよくこういう話をする。
「未来を見るのも大切だけど、今この瞬間を楽しむことのほうがもっと大切」
と。
なんとなく話していた会話だけど
彼のおじいちゃんが亡くなってから
その意味をより理解するようになった。
「明日なんて来るかわからない。」
当たり前のように日は上り“明日”がやってくるものだと思っているが
未来は誰にも予想できないものである。
「もし明日死ぬとしたら？」
考えたくもないテーマだけど
これは本当にわからないものだ。
誰にだってその可能性はある。
だから
「明日やろう」
と思っていたことが一生できないこともある。
私が大好きなドラマ「プロポーズ大作戦」で
主人公、長澤まさみのおじいちゃんが彼女に恋する幼馴染役、山下智久に放った台詞
「明日やろうは馬鹿野郎だ！」
これまで彼女に自分の気持ちを打ち明けるのを
「次にしよう」
「また機会があった時にしよう」
と後回しにしていた彼だが
この台詞をきっかけに彼は彼女の元に走り出した。
自分の気持ちに“今”答えたのだ。
この台詞を聞いたのは私がまだ小学生の時。
まだあんなに幼かったのに
小学生の私なりに
ぐさっときた。
「明日やろうは馬鹿野郎」
その通りだと。
後回しにしていては何もできない。
いつもお世話になっている人
例えば、お父さんお母さんお兄ちゃん、おじいちゃんおばあちゃん
友達や彼氏
みんなに日々抱いている気持ち
「いつもありがとう」
「大好きだよ」
これらは思っているだけではなかなか伝わらない。
けれど伝えるのは恥ずかしいからまた今度にしようと後回しにする。
けれどこうして
「また今度」
ということを繰り返しているうちに
この言葉を伝えないまま人生が終わることだってある。
だったら今伝えるしかない。
“今”私たちは生きているのだから。
恥ずかしいかもしれないけれど
一生伝えられず後悔することを考えたら
恥ずかしいなんて気持ちはなくなる。
未来を見て生きていくことももちろん大切だが
今を生きていくほうが後悔しない生き方ができるのではないかと思う。
“今”を生きる彼
私たちが生きている“今日”を
生きたくて生きたくて仕方なかった人がいる。
この今日という日を迎え入れることができなかった人もいる。
私たちはそれを理解しなければならない。
そしてその人たちの分まで
生きなければならない。
彼はもうそれを実行していた。
私が大切な人を亡くしたばかりの彼の立場だったら
明日になんて目が向かないし
ましてや今明るく振る舞うなんて
笑うなんて絶対にできないだろう。
けれど彼は笑っていた。
いつもと変わらず笑顔だった。
彼は“今”を生きていた。
“今”を大切に生きていた。
じいちゃんが生きたくて生きたくて仕方なかった今日を
彼は全力で悔いのないように楽しんで過ごしていた。
“今”を生きていこう
生きていることに感謝して
これからも前を向いて
小さな幸せをたくさん見つけて
今日も生きていこう。
じいちゃんが生きたかった今日を。
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